【『道を継ぐ』刊行記念対談】人生に迷ったらカリスマ女性美容師に聞け!GLAMOROUS代表TAKAKO(後編)〜「幸せな自分」を作れるのは、自分だけ〜
49歳でその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子さんを描いた『道を継ぐ』(アタシ社)が「私もこんな風に生きたい!」「女友達みんなに読ませたい!」と大反響。なぜいま、女性美容師の生き方がこれほどまで一般の女性に支持を受けているのでしょうか。 『道を継ぐ』の著者の佐藤友美さんと、カリスマ的人気を誇る女性美容師さんの対談連載最終回です。
※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36188/)
【後編】「幸せな自分」を作れるのは、自分だけ
GLAMOROUSのオーナー兼ディレクターのTAKAKOさん。後編では、彼女自身の壮絶な体験から生まれた数々の気づきと、目標を定めて自己プロデュースしていく方法について伺いました。(前編はこちら)
どんな経験もあなたの幸せにつながっている
高校を中退した日に、救急車で運ばれて
佐藤:TAKAKOさんは24歳という若さで管理職になりましたよね。今では経営者としても活躍されています。男性社会の組織で生きていく「芯の強さ」を感じますが、それはいつ生まれたものなのでしょうか。
TAKAKO:実は私、高校一年生のときに学校を辞めていて、それがひとつのきっかけになっています。当時は中卒でも美容師になれる時代だったんですが、美容師なら努力して技術をものにすれば上に行けると友達から聞いて、すぐ辞めました(笑)。学校の勉強が辛かったんです。
佐藤:周囲からは反対されなかったんですか?
TAKAKO:もちろん、されましたよ〜。親不孝だと言われましたし、親も親戚から悪く言われたようで肩身が狭かったと思います。だから美容師として一人前になるまでは、親戚と会うのは絶対やめようって決めたんです。
佐藤:そこで自分の強い「軸」のようなものが生まれたんですね。
TAKAKO:しかも私、高校中退した日の帰り道に交通事故にあって1ヵ月半ぐらい入院したんですよ。
佐藤:えっ、何それ!?なんかもう、壮絶すぎて…。
TAKAKO:救急車で運ばれているとき、頭からは血が流れてちゃぷちゃぷいってる音が聞こえるし、まったく動けないし、親にも悪いし、本当に私はバカだって思いました。自分が情けなくて、だから私ほんとに頑張ろうと決意したんです。絶対美容師として上に行ってやろうって。その気持ちが私を強くしたのかもしれませんね。
「幸せでいられる自分作り」のために「今」を頑張る
佐藤:「上に行ってやる」って決意した15歳の頃から「これだけは今も続けている」ということがあれば、ぜひ教えてほしいのですが。
TAKAKO:うーん、そうですね。ずっと変わっていないのは、「幸せでいられる自分作り」をするということです。
佐藤:「幸せでいられる自分作り」?
TAKAKO:いろんな人を見て育ってきたのですが、人間として常に幸せでいるのって、すごく難しいことだなって感じたんですよね。だからこそ、常に幸せで笑っていられる女性でありたいと15歳の頃から感じていました。
佐藤:15歳でそこにたどり着いたのはすごいですね。
TAKAKO:高校中退した瞬間から、私はその事実を一生背負って生きていくことになりました。そのときから、これを背負って自分はどう幸せに生きるかを考えていたんです。
佐藤:なるほど。
TAKAKO:今では、美容師としての苦労はどれだけしても「不幸せ」とは思いません。美容師として仕事ができることがすでに「幸せ」だからです。あとは将来も美容師として仕事を続け、幸せでいられるために、「今」を頑張っておくことも大切だと感じています。生涯現役美容師でいたいと思っていても、お客さまがいなければ美容師は続けられません。将来の自分が幸せであるためには、今、目の前のお客さまにあと何十年も来ていただけるように頑張らないと。
365日、24時間のすべてを、「仕事の糧」にし、「幸せの種」にする
佐藤:将来のためにも、30代、40代の今が大事、だと。
TAKAKO:私は特に、30代が一番楽しい時期だと思います。20代での経験が反映され、30代になると立場や役職がついてきますよね。
TAKAKO:大変にもなるけど、それを歓迎して仕事にどんどん没頭したほうが、結果的に、将来の幸せをつかむことができるようになると思うんです。
佐藤:30代は女性としてもライフスタイルが変化しやすい時期でもあります。でも、だからこそ仕事に対しての向き合い方で差が生まれるのかもしれませんね。
TAKAKO:昔話が多くて恐縮ですが、私、4年ほど前にくも膜下出血の疑いがあって、病院に運ばれたことがあったんです。MRI検査をしたら頭の神経と目の神経がストレスでくっついていたみたいで。
佐藤:そんなことってあるんですね…。治ったんですか?
TAKAKO:これが、奇跡的に治ったんですよ。で、驚いたんですが、その直後、私と同じ歳のお客さまにまったく同じ病気にかかった人がいらしたんです。その方には、自分の経験からいろんなアドバイスができました。病気や事故もその気になれば全部「経験値」にできるのが、美容師という仕事のいいところだなって感じます。お客さまとの会話に生かせれば、どんな辛い出来事も、ちゃんと自分の幸せにつながっていくんです。
佐藤:何を幸せと思って生きるかは、その人次第なんだなあって、いま、TAKAKOさんの話を聞いていて思いました。365日、24時間のすべてを仕事の糧にして、幸せに変換できるって、素晴らしいなあと感じます。
目標を定めて、狙い通りに自己プロデュースする
「認められたい人」に合わせて服を着る
佐藤:自己分析していただいたチャートでは、TAKAKOさんは「自己プロデュース」を最高の5点にしてますよね。SNSが発達し、仕事に限らず「自分の見せ方」に悩む女性は多いと思いますがTAKAKOさんが意識されているポイントはどんなところですか。
TAKAKO:ちょっと昔の話をしてもいいですか?
佐藤:もちろん。
TAKAKO:私、若い頃から、「自分が担当したいお客さま」の好みに合わせて服装選びをしているんです。
TAKAKO:というのも、私、童顔で声も子どもっぽいので、デビューしたての頃はとにかく幼く見られがちだったんです。すると中高生などの学生ばかり、担当することになるんですよね。でも、もっと高い年齢層のお客さまに指名されなければ、いつまでたっても成長できないな、と思って。
佐藤:でないと売り上げも上がらないし、成績も伸びませんからね。
TAKAKO:それで貯金を下ろして、当時芸能人の方たちが着て流行っていたイッセイミヤケのプリーツプリーズの服を一週間分買って、制服にしたんです。
佐藤:それは…相当な金額になりますね。若いときであればなおさら、相当な勇気と覚悟が必要だと思います。
TAKAKO:でも、そういうモードな服を着ていると、それに反応してくださるオシャレ感度の高いお客さまに指名していただけるようになったんですよね。お客さまの単価も一気に上がりました。だから、「こういう人に認められたい」という相手に合わせて、背伸びをすることって大事だなって思って。
佐藤:その背伸びした分の投資って、きっと自分に返ってくるんでしょうね。
TAKAKO:『道を継ぐ』にも「背伸びした分、成長する」というシーンがありましたよね。「あ!私もちゃんとやっていた!」と嬉しくなりました(笑)。
「生涯美容師選び」はダンナ選びより大事
TAKAKO:その頃指名してくださったお客さまは、20年たった今でも通ってくださっていて、本当に人生をともに生きる大切な存在になっています。私、そんなお客さまの「生涯美容師」になることを目標としているんですよね。
佐藤:生涯美容師、ですか。
TAKAKO:そうです。美容師にとって一番大事なのは技術です。でもそれだけではなく、技術を超えた信頼関係を築くことで「生涯美容師」として一生、担当させてもらえるようになるんですよね。
佐藤:なるほど。私は「ダンナ以上に美容師選びが重要」と表現することがありますが、それくらい、自分と相性のいい美容師さんを見つけることは大事なことだと思います。
TAKAKO:そう。だから、いろんな美容師を渡り歩いていいから、生涯を預けられる美容師を真剣に探してほしいと思います。そんな美容師であれば、悲しいことも辛いこともすべて、自分のことのように思って聞いてくれるはずです。
佐藤:先ほどTAKAKOさん、「どんな辛い経験でも、お客さまとの会話のためになるなら、いい経験ができて幸せだったと思える」と言ってらしたけど、そんなふうに考えてくれる美容師さんと出会えたら、お客さまも本当に幸せだなあって思います。
「特別な自分」になりたいときはカラーで変身する!
佐藤:TAKAKOさんがお客さまをプロデュースするときは、どこを見て、何を引き出してあげることが多いですか?
TAKAKO:まず、くせ毛の人ほど、くせを生かすようにしています。
佐藤:くせを生かすというのは、私も大賛成です。いろんな世代の女性のヘアスタイル撮影に立ち合ってきましたが、そのほうが絶対に可愛くなるし、くせが個性になるんだなあって気づきました。
TAKAKO:私、お客さまには絶対にストレートパーマはおすすめしないんですよ。「自分のくせが好きになった」と言ってもらえるように切ってあげたいと、いつも思っています。
佐藤:自分の髪のくせを好きになれると、自分自身も好きになれるんですよね。
TAKAKO:そうなんです。あとはやっぱりカラーですね。
佐藤:カラーなんだ!
TAKAKO:そうです。私も前までは一番印象が変わるのはカットだと思っていたんですよね。でも今は、もともとおしゃれな髪型の女性が多いので、差を出すならカラーですね。私、美容技術を学ぶために毎年、ロサンゼルスをはじめ、いろんな国に行って研修を受けているのですが、人の印象を変えるには、世界共通でカラーだと実感します。
佐藤:具体的には、どんなカラーがおすすめですか?
TAKAKO:年配の方ほど明るくしたほうが、肌も明るく魅力的に変身しますよ。
佐藤:すごくよくわかります。私も、40歳を超えたらヘアカラーは絶対明るくしたほうがいいと思う。白髪も真っ黒にして隠すよりは、明るめでぼかすほうが、疲れて見えなくなりますよね。
TAKAKO:自分の年齢や悩みに応じて、自分に合ったカラーの見せ方は変わります。だからこそ、生涯にわたって自分の髪を預け、自分の悩みを共有できる「生涯美容師」を見つけてほしいと思います。
佐藤:それだけで女の運命は変わると言っても過言ではありませんよね。今日は参考になるお話を本当にありがとうございました。
撮影/中村彰男
対談を終えて
初めてTAKAKOさんに出会ったとき、アニメのキャラのような可愛い顔立ちと声の奥にある、揺らぎのなさや芯の強さに、デジャヴ感を感じました。誰かに似てるって思ったんですよね。___『道を継ぐ』の主人公の鈴木三枝子さんでした。対談中、TAKAKOさんは「この本ができたことで、鈴木さんは私の中で一生生き続けていきます」と言ってくださいました。
鈴木さんが歩いた道を、TAKAKOさんが追いかけ、そのTAKAKOさんが切り開いた道を、また後輩たちが追いかける。「道を継ぐ」とは、一心に生きた人たちの命の連鎖のようなものだと感じます。
私も、誰かの心の中で一生生き続けていくような仕事をしたいなあ、これからも頑張ろうって思った瞬間でした。TAKAKOさんと話せて良かった。(佐藤友美)
※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36188/)
プロフィール
TAKAKO(たかこ)
大手サロングループC-LOOP UNITEDにおいて、女性最年少でチーフに就任。店長を歴任して独立し、神奈川県横浜市鶴見にGLAMOROUSをオープン。各所で研修やセミナーを行う傍ら、自身も技術を学ぶため毎年海外に出張している。サンフランシスコにある世界的にも有名なGINA KHAN SALONにてハイライトカラーの技術を習得。 お客さまを魅力的にすることをモットーに、一生涯付き合える美容師を目指し活動している。
佐藤友美(さとう・ゆみ)
日本初のヘアライター&エディター。ファッション誌やヘアカタログの「髪を変えて変身する企画」で撮影したスタイル数は4万人分を超える。「美容師以上に髪の見せ方を知っている」とプロも認める存在で、セミナーや講演を聞いた美容師はのべ2万人を超え、これは全国の美容師の20人に1人の割合にあたる。著書に7万部突破のベストセラーとなった『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、発売即重版となった『道を継ぐ』などがある。
『道を継ぐ』とは?
49歳でスキルス胃がんによってその生涯を閉じた伝説の美容師・鈴木三枝子を描いたノンフィクション。今なお人々の心に残り、動かし続ける彼女のメッセージとはどのようなものなのか。1年半の歳月をかけ、191人の関係者に取材を敢行した先にたどり着いた「答え」は、働く女性にとって、強く心に響くものがある。「働き方・生き方を見直すきっかけになった」と、年代・世代を超えて感想が寄せられており、業界を超えて大きな反響を巻き起こしている。
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※当記事はHAIR(hair.cm)からの転載記事です。(元記事:https://hair.cm/article-36188/)
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