オンナゴコロのくすぐりドコロ 第4回:プチ贅沢
贅沢とまではいかないけれど、いつもよりちょっといいものを、という「プチ贅沢消費」が、SNS時代になってますます加速しているように思います。
たとえば、スターバックスのコーヒーはまさに「プチ贅沢」の代表格。家でインスタントコーヒーをいれれば、一杯数十円で済むけれど、落ち着いた空間で、ちょっとオシャレなカップに入ったコーヒーを飲む。その価値のために、人は10倍の値段を払うわけです。
朝ご飯がブームになったのも、この「プチ贅沢」潮流の流れに沿っていて、バタートーストとサラダの組み合わせやパンケーキなんて、家でも準備できるもの。それを、外で友達と楽しく食べるからこそ、価値があるんですよね。ここ数年の肉ブームや餃子ブームも、自宅でも食べられる焼肉や餃子をあえて外でオシャレに食べるところに、贅沢感や新鮮さがあるのだと感じています。
このシリーズは、枚挙にいとまがありません。ブランドもののバッグは買えないけれど、お化粧ポーチをシーズンごとに変えてみたり、ヘアサロンは毎月行けなくても、ヘアサロン専売商品のシャンプーとトリートメントで髪の毛をケアしてみたり、月に一回、自分へのご褒美としてエステを予約してみたり。そんな、それぞれの「プチ贅沢」が世の中には溢れています。
「プチ贅沢」って日本人の気質にほどよくマッチしているんですよね。「贅沢」を堂々と自慢するのは、品性に欠けて、かっこ悪い。一時のヒルズ族のように、ネガティブなイメージがそこにはつきものです。けれど、いつもの私プラスアルファの、度を越さない贅沢には、暮らしを楽しんでいるポジティブなイメージがつく。いってしまえば、たかがコーヒータイム、たかが朝ご飯でも、そんな「たかが」を「されど」に変えるのは、自分の意識と工夫次第だというところに「プチ贅沢」の醍醐味があります。
そしてプチ贅沢はSNSと、ものすごく相性が良いのです。コンビニの100円アイスを食べたことはわざわざ人に言うほどのことでもないかもしれないけれど、ハーゲンダッツはインスタグラムに載せたくなる。期間限定のフレーバーならなおさらです。朝ごはんも、盛り付けやトッピングを工夫した時には写真を撮って誰かに見せたくなるもの。
高級クラブで一瓶いくらの高価なシャンパンを飲んだことよりも、自家製のサングリアを庭で飲むシーンのほうが、「いいね!」が多くつく時代。
この時代感覚を正しく捉えることが、サービスを設計する職業につく人にとっては、重要かもしれません。