お客さまと一生寄り添うということ
今回はちょっと角度を変えたお話をさせていただきます。
先日、私は病院に配布する、医療用ウィッグの写真集を作るための打ち合わせをしてきました。医療用ウィッグ……。不勉強だった私は、それまでそのようなものがあることは知っていても、どこで売られているのか、いくらくらいのものなのかも知りませんでした。
日本人の2人に1人はがんに罹患すると言われています。特に、女性に発生するがんとしては一番多い乳がんは12人に1人が罹患し、また、その治療に使われる抗がん剤では脱毛の副作用が見られることがほとんどです。
他のがんと違って、乳がんや子宮がんなど、婦人科系のがんは、若い世代、特に40代に発症が多いことが特徴です。皆さまのお客さまの中にも、闘病中の方がいらっしゃるかもしれません。病気になられた方々の中には、仕事先にも内緒で闘病をしていたり、子どもがショックを受けないようにとお子さんにも内緒で闘病している人も少なくないと聞きました。
職場でも、家庭でも、今までどおりの生活を続けたい。そんな彼女たちにとって、大きなハードルとなるのが脱毛です。いかにもかつら、というウィッグでは、闘病に前向きになれない、職場でもバレてしまう。時には、ウィッグになるのが嫌で、治療結果が落ちるとしても抗がん剤治療を拒む方もいらっしゃるそうです。髪はそれほどまでに女性にとって大切なものなのです。
お客さまと生涯付き合っていくことを考えると、このような「髪」の問題は、かつらメーカーだけに委ねるのではなく、髪のプロである美容師さんたちが相談にのれる日がくるといいなと感じました。人毛100%、カットもカラーもできるウィッグをヘアサロンで買って信頼している美容師さんに切ってもらうことができる日がきてほしい。これが、私が、医療用ウィッグのプロジェクトに参加した理由です。
「美容師の仕事は人の命を救うことはできないけれど、人の命をいきいきと輝かせることができる仕事」。私の尊敬する美容師さんの言葉です。
大人女性の美をサポートする存在として、美容師さんができること、美容師さんの技術や寄り添いが求められているシーンは、まだまだたくさんあると感じています。