【サロンのための美髪と経営コラム】縮毛矯正の重要な4つのポイント 第二部「酸化」
前回の第一部「還元」はいかがでしたか?
多くの方に読んでいただき、ありがとうございます!
さて今回は第二部の「酸化」です。
酸化は2剤の働きですが、2剤について考える機会は少ないかと思いますので、
今回もぜひ最後までご覧ください。
INDEX
酸化(2剤)のポイント
理美容業界で酸化とは2剤でSS結合を再結合することですが、ポイントはしっかりムラなく塗布し、規定の時間 放置することです。
まず塗布ムラは、仕上がりや持ちの悪さに繋がります。
縮毛矯正の2剤はクリームタイプが多く、そしてドライ塗布が基本だと思いますが、乾いた髪にクリームをムラなくスピーディーに付けるのはなかなか大変ですね。
しかもアイロン施術後というのは疲れも溜まり、また山場を乗り越えホッと気が抜けることでチェックがあまくなり、塗布ムラが起こりやすいため注意が必要です。
しかしここで「塗布があまくても、空気酸化するから大丈夫」という話もありますが、これは実際どうなのでしょうか?
空気酸化で大丈夫か?
答えから言えば、空気酸化にはあまり期待しないほうがいいかと思います。
まず前提として縮毛矯正やパーマでは、どのようにきちんと2剤処理を行っても、SS結合を完全に再結合させることはできません。
例えば、1剤で10箇所のSS結合が切れたとして、2剤で再結合できるのは7~8箇所ほどしかなく、残りの2~3箇所はシステイン酸に変化し、SS結合の総数は縮毛矯正やパーマを行うたびに減少していきます。
そして空気酸化についてですが、以前は、1剤で切れたSS結合は空気によっても再結合が起こると言われていましたが、その後研究が進み、現在では多くの研究者が(毛髪において)空気酸化でSS再結合が起こる可能性はほぼ無いとしています。(ヘアカラーの酸化重合はまた別の話です)
つまり、ただでさえ再結合しにくいSS結合に必要なのは、空気酸化ではなくしっかりとした2剤処理です。
2剤のダメージとポイント
「1剤なら分かるけど、2剤でダメージ?」と思われるかもしれませんが、実はあります。
2剤はタイプによって作用の仕方やダメージの要因が異なりますので、
それぞれの特性やポイントをまとめます。
ブロム酸タイプの場合
ブロム酸は作用がゆっくりと長く続きますが、放置しすぎるとダメージに繋がります。
「きっちり酸化しなきゃ」と長く放置するよりも、塗布を充分に行い通常どおり放置します。
またパーマ施術では一般的に、ブロム酸が正しく働くように直前にバッファー剤を使用しますが、縮毛矯正では実際、あまり使用しないのではないでしょうか?
その場合、できるだけ作用を促すために2剤をたっぷりと塗布し、浴比(よくひ)※を高めることが重要かと思いますので、やはり充分な塗布を心がけましょう。
※ここでの浴比とは、毛量に対する薬剤量のこと
オキシ(過酸化水素)タイプの場合
オキシ(過酸化水素)は作用が早く短いため、より素早くムラなく塗布することが必要です。
また、オキシタイプ塗布時に多くみられますが、髪が発熱することはないですか?
主な原因は、オキシが残留アルカリや毛髪中の金属と反応し、急激に活性化する反応熱と言われています。
この熱で髪が傷むと言われますが、熱がダメージの原因というよりも、熱が出るほどの急激な作用が問題です。
顕著な発熱が頻繁に起こるのであれば、まずは中間水洗をよりしっかりと行うようにしましょう。
きっちり流したと思ったそこから、さらにもう1~2周流すぐらいでも良いかもしれません。
また毛髪中の金属は、ダメージ毛や、鉄・亜鉛などのサプリメントを常用されている方などに多く存在しています。
この金属のケアについては、その働きを持つ処理剤が効果的です。
マテリケア【オキシバッファー】
ヘアカラー剤は、2剤の代わりになるのか?
「ストレート後にカラーをする場合、カラー剤が2剤の代わりになるので、2剤処理はいらない」といった話を聞かれたことはないですか?
(化粧品のアイテムをのぞき、医薬部外品のストレート剤とヘアカラー剤を、同日に使用することは認められていませんのでご注意ください)
ストレート2剤もヘアカラー剤もどちらも活性酸素を発生させます。
その活性酸素の働きは、ストレートではSS結合の再結合に働き、ヘアカラーにおいては酸化重合や脱色に作用します。
そのためヘアカラー剤ひとつで、SS再結合とカラーリングが同時にできると考えるわけですね。
理論的にはたしかにそうであり、便利な方法かもしれませんが、ダメージについても考えてみましょう。
まずはじめに、ヘアカラー剤が生む活性酸素は強い(多い)ため、SS結合を切ってしまう恐れがあります。(ブリーチは特に有名だと思います)
また空気酸化の項にあったように、縮毛矯正やパーマではどのようにきちんと2剤処理を行っても、SS結合を完全に再結合させることはできません。
つまり、そもそも再結合しにくいSS結合に対し、SS結合を切る恐れがあるヘアカラー剤を使うことは、SS結合の減少を自ら早める行為かもしれません。
SS結合の減少は、縮毛矯正やパーマが安定しなくなる・できなくなる、髪がビビリやすくなるなどに繋がります。
施術の時短は、特に少人数のサロンさまにとっては、とても大切なことだと思います。
しかしそればかりではなく、お客さまの心理や、(ダメージを抑え)美髪を保つことで失客を防ぐという観点も重要ですので、しっかりと考えたいですね。
参考コラム:お客さまを定着させる美髪ケア
まとめとして
いろいろと書きましたが、ポイントをまとめてみますと、
・2剤はしっかりとムラなく塗布する。
・空気酸化に大きな期待はしない。
・放置時間は規定どおりに。
・オキシ塗布時に顕著な発熱が起こっている場合は「丁寧な中間水洗」や「処理剤の活用」で対応する。
以上、まさに基本どおりといった内容ですが、あらためて基本の大切さが分かります。
次回は、連載最後となる第三部「水抜き」「熱置き」です。
縮毛矯正で重要なアイロン技術に関する内容です。
商品教育 桝田