【やさしく学ぶ最新の基礎知識】PPTの種類
今回は、古くから補修成分の代表的存在であるPPTについてです。
これらは、髪と同じ繊維の世界であるアパレル業界でも活躍していて、例えば、ムーランエムーランでも採用している高分子PPTは、洗いやシワに強い形状記憶スーツや、染料の定着性を活かしてスーパーブラック生地などに応用されています。
それでは、PPTの基礎を見ていきたいと思います。
INDEX
PPTとは
PPTは、Polypeptide(ポリペプチド/ポリペプタイド)の略で、羊毛や羽毛、絹や大豆などのタンパク質を分解し作られた補修成分です。
髪のケラチンタンパク質と同様に、アミノ酸が鎖のように繋がった形をしていて、低分子・中分子・高分子などの種類があります。
アミノ酸が数多く繋がっていてサイズが大きい(長い)ものを高分子PPTと呼び、繋がっている数が少なくサイズが小さい(短い)ものを、低分子や中分子PPTと呼んでいます。
一般的に、1つのアミノ酸の分子量は約100とされ、合計が数百単位のものが低分子PPT、数千単位のものが中分子PPT、数万単位のものが高分子PPTに分類されるかと思います。
分子量による作用
分子量の違いによって、髪への働きも変わってきます。
代表的なものとしては、浸透性などがあります。
分子量が低いほど、髪内部への浸透がスムーズですが流出しやすく、分子量が高いほど浸透しにくくなりますが、外部への補修・保護などに優れています。
どの分子量が良い・悪いということではなく、ダメージや目的に応じた選択が大切です。
例えば、ローダメージ毛の場合、内部はそこまで傷んでいないため低分子は必要なく、しかし高分子では保護し過ぎるため中分子をかるく塗布してみたり、ハイダメージ毛の場合は、外部を中心に内部まで傷んでいるため低分子と高分子を併用するなど、その時々に応じた様々な処理が考えられます。
なかには、低分子・中分子・高分子などがミックスされたアイテムもあるかと思います。
とても便利なアイテムですが、補修不足や過剰が起こる可能性もあるため、配合成分とメインとなる成分を把握して使用することが大切です。
また基本的に、分子量が高いものほど元のタンパク質に近いため、タンパク質らしさが出やすい傾向があります。
タンパク質らしさとは、例えばケラチンはハリコシ感、コラーゲンはしっとり感、シルクはサラサラ感というものです。
タンパク質による違い
先ほど、タンパク質らしさについて少し触れましたが、ここでは代表例を詳しく見ていきます。
ケラチン
羊毛などが由来で「システイン」を多く含み、髪にハリコシを与えます。
ヘアカラー染料の定着や、パーマでのウェーブ力の向上などが期待できます。
髪と同じタンパク質のため、PPTの中では最も代表的な成分となっています。
コラーゲン
魚などが由来で「グリシン」「ヒドロキシプロリン」などを豊富に含み、水分保持や柔軟性の向上などに働きます。
ダメージでうるおいが不足し、パサつき・硬さが出てきた髪に効果的で、トリートメントなどにも活用されます。
ベタつきが少ないうるおい感のため、乾燥した細毛にも使用しやすいかと思います。
シルク
繊維状のフィブロインと、無定形のセリシンの二つがあります。
フィブロインは「グリシン」「アラニン」などを多く含み、光沢感やサラサラ感が特長で、質感調整として事後処理や仕上げ時の使用などに適しています。
セリシンは「セリン」「トレオニン」が約40%を占めており、保湿性が特長となっています。
エンドウ
「グルタミン酸」「ロイシン」「プロリン」などが多く、ハリ感や保湿性が向上します。
ケラチンに比べシステインが少なく、やや穏やかなハリコシ感ですが、ゴワつきにくいため質感調整などに適しています。
ダイズ(大豆)
酸性アミノ酸の「グルタミン酸」「アスパラギン酸」が多く、うるおいやしなやかさを与えます。
原料としては低分子のものが多く、浸透性に優れ、髪の内側からうるおいを高めます。
化学修飾について
化学修飾(かがくしゅうしょく)とは、PPTの一部に化合物を結合して機能を追加することです。
例えば、PPTの基本的な性質はそのままに定着力をアップさせるなど、様々な機能があります。
代表例を見ていきます。
カチオン化
PPTにプラスイオン成分を追加し、ダメージ毛(マイナスに帯電)への吸着性を高めます。
補修効果の持続性・帯電防止効果・ツヤ感向上などの特長があります。
代表的な化学修飾の方法です。
シリル化
PPTにシリコーン化合物を結合させます。
ドライヤーなどの熱によって被膜性が高まり、ツヤ感や滑らかさを与えます。
通称として、ヒートPPT・ヒートプロテイン・ヒートプロテクトなどと呼ばれています。
アシル化
PPTに脂肪酸を結合させます。
PPTの種類としては、油溶性タイプや界面活性剤タイプなどがあります。
油溶性タイプは、キューティクル補修効果や柔軟性の向上などに働き、主にヘアオイルやトリートメントなどに配合されます。
界面活性剤タイプは、シャンプーなどに配合されます。
アルキル化
PPTに油類似成分を結合させ、ダメージ毛への吸着性を高めます。
滑らかさ・まとまり・ツヤ感などを向上させます。
スルフォン化
PPT製造の過程で消失しやすいケラチンのS-S結合を、S-S03H(ブンテ塩)にすることでS-S結合を保ちます。
施術では髪のS-S結合に働きかけ、強度向上やシステイン酸生成の抑制などに働きます。
コチラもご覧ください:【システイン】に【結合】(成分例:活性ケラチン)
おわりに
前回もご紹介しましたが、PPTでは近年、スルフォン化ケラチン(活性ケラチン)が登場し、PPT以外でもさまざまな補修成分が登場しています。
サロンさまにお話を伺うと「最近のアイテムは、いろんな原料が入ってて正直よく分からないけど、たくさん入ってて良さそうだから使っている」とお話され、そして同時に「スタッフやお客さまに聞かれても、うまく説明できなくて焦る」ともおっしゃいます。
顧客やスタッフの減少が続く今だからこそ、基本に立ち返ることが大切ですね。
皆さんが自信を持ってサロンワークに取り組めるように、今後もできるだけやさしく、分かりやすく解説させていただきたいと思います。
商品教育 桝田