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【サロンのための美髪と経営コラム】縮毛矯正の重要な4つのポイント 第三部「水抜き・熱置き」

縮毛矯正の連載は、今回が最後の第三部「水抜き・熱置き」です。
聞きなれない方もいらっしゃるかと思いますが、この水抜き・熱置きというのは、
クセ伸ばしとダメージの抑制に関する重要なアイロンの技術になります。
今回も、ぜひ最後までご覧ください!

INDEX

アイロン前の水分について

アイロン技術には様々な方法があるかと思いますが、今回はアイロンの効果を高めるために、水分を活用するというお話です。
身近な物で例えれば、ハンカチのシワをしっかり伸ばすために、霧吹きで湿らせて衣類用アイロンをかける方法が似ているかもしれません。
しかし髪の場合、濡れたままアイロンをかけると、お客さまの髪が傷んでしまいます。

そこでアイロン前のドライをひと工夫します。
ドライヤーで乾かしながら、髪から水分を抜いていきますが、抜き過ぎないことがポイントです。
とは言っても「少し濡れた状態でドライをやめる」ということではありません。

「きちんと乾かすが、髪内部には程よく水分が残っている」という状態にして、そしてその水分を活用していきます。
ちなみに、この状態になった髪は「きちんと乾いている(濡れていない)のに、髪がひんやりする」感触がするかと思います。

では次の項から、その施術方法を見ていきます。

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水を抜き過ぎない方法

ここから施術方法を見ていきますが、その前に、忘れてはいけないことがあります。
それはやはり、髪のダメージを最小限に抑えることが基本であり重要ということです。
ダメージが進むことで様々な問題が起こりますが、その中で今回問題となるのは、ダメージによって髪が水分をキープできなくなるため、水分を活用しにくくなるということです。

ダメージを最小限に抑えるためには、適切に事前処理を行ったり、必要以上に強い1剤を使用しないよう注意します。
コーミングやシャワーの水圧など、物理的なダメージも油断できません。

そして本題の方法ですが、例を3つご紹介します。

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①冷風を活用する

温風を中心に、細かく冷風に切り替えながら乾かすことで、程よく水分をキープすることができます。

効果だけを考えれば冷風だけで乾かしたいところですが、ドライ時間が長くなり過ぎることや、お客さまの快適性(寒さ)を考えると現実的ではないかと思います。

また最近では、中・低温で大風量で乾かすタイプのドライヤーが増えてきており、これらを使用するのも良いかと思います。
従来の高温で乾かすタイプよりも水分をキープしやすい傾向があり、冷風を当てる方法に近い仕上がりになると思います。

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②ブロックごとにドライ&アイロンをする

場合によっては「一気に全体を乾かさない」のも、ひとつの方法です。

通常は、一気に全体を乾かし、その後ネープなどのパネルからアイロンをかけていくかと思います。
しかしアイロンをかけている間に、まだアイロンをかけていない髪の自然乾燥が進むため、最初にかけるパネルと最後のパネルでは、水分量が大きく違う場合もあるなど、最後のパネルのほうが伸びにくいことがあります。

そこで頭をいくつかにブロッキングして、ブロックごとに[ドライ]⇒[アイロン]⇒ 次のブロック[ドライ]⇒[アイロン]をくりかえします。
手間はありますが、特に、乾燥しやすくクセが強めのお客さまや、毛量が多く最初と最後のパネルにタイムラグが出そうな場合などに有効かと思います。

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③中間処理を行う

これは化粧品登録のコスメ系ストレート料を使用の場合ですが、1剤すすぎ後の中間処理に、CMC・PPTなどの処理を行うのも良いかと思います。
これによって、水を吸いやすく乾燥しやすい親水毛から、乾燥しにくい疎水毛(そすいもう)に近づきます。

※医薬部外品のストレート剤は、使用方法として中間処理は薬機法上認められていませんので、コスメ系ストレート料を使用時と限定し、ご紹介しています。

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(その他)ブローは必要か?

ドライ時に、ツインブラシなどでブローをされる方もいらっしゃるかと思います。
手間や技術的な難しさなどはありますが、髪質によってはアイロンのみよりもクセを伸ばしやすいかと思います。

タオルドライ後のウェット状態から[ブロー]でキレイにクセを伸ばし、その後の[アイロン]でその形を固定するイメージです。
全頭施術は難しくても、伸びにくい箇所になど部分的に取り入れてみたり、また応急処置が必要な場合にも役立つかもしれません。
コチラもご覧ください:還元不足時の応急処置の例

一方、ブローをしない通常の[ドライ]⇒[アイロン]の場合は、アイロンでクセ伸ばしと固定を行いますので、アイロンの効果を高める水分の活用などがとても重要となります。

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アイロン中に起こること

アイロンを行うと何が起こるのでしょうか?

よく例えられるのが、生卵が目玉焼きになるタンパク変性かと思います。これはタンパク質を固めて髪を直毛化するイメージでしょうか。
また、アミノ酸同士の脱水縮合という反応も、縮毛矯正の初期から言われています。
これはアミノ酸のカルボキシ基(COOH)とアミノ基(NH₂)が、水分子(H₂O)を作り放出しながら結合する反応のことで、この反応は熱によって促進されます。

そしてこれら以外にも近年の研究による重要な理論があるのですが、説明が難しいためあまり語られないそれらを、できるだけ簡単に解説します。

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ガラス転移点(ガラス転移温度)

簡単に言えば、固体がやわらかくなりはじめる温度のことを言います。
例えば、ガムのガラス転移点は約30℃で、口に入れると体温(約36℃)によってやわらかくなります。

縮毛矯正では、アイロンの熱によって髪のケラチンなどをやわらかくして、変形させる(直毛に近づける)という側面があります。
このケラチンは、やわらかくなりはじめる温度が含水量(水分量)によって変わります。
水分が少ないと、この温度が高くなり、水分が多いと低くなります。

この意味は、水分が少ない髪ほどアイロンの温度を高くする必要があり、また同じ温度の場合、髪に水分があるほうがアイロンが効きやすいということです。
そして水分をうまく活用できれば、温度を下げて(熱ダメージを抑えて)のクセ伸ばしができるかもしれません。

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SS結合の組み替え(SS-SH交換反応)

SS結合の組み替えも起こると言われています。

SS結合は、いちばん近くの側鎖同士が結合することが理想的ですが、このSS結合の組み替えとは、より最適な相手を探す時間のようなものです。
コチラもご覧ください:やさしく学ぶ最新の基礎知識

つまり、髪に水分がある状態でアイロンをかけることは、理想的な結合の手助けとなることが考えられます。

そしてこの反応は、熱と水分の影響によって、動きがスムーズ・スピーディーになります。
しかし実際、アイロン中の時間だけでは、充分な反応は得られないかもしれませんが、余熱が無くなり髪が常温に戻るまでが重要とお考えいただき、この間は髪を強くねじったりしないほうが良いかと思います。

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熱を置くように蒸す

今回のアイロン技術のポイントは、髪を「蒸す」ことです。
それには、水分をアイロンで加熱し、フタをして閉じ込めるイメージで施術を行います。

実際には、熱を置くように・髪を閉じ込めるように、ゆっくりとアイロンスルーを行っていきます。
一ヶ所に2秒以上アイロンを当てないことを基本に、ギュッと潰さないように注意します。

また、1剤の還元不足の場合、それをカバーするために何度もアイロンをかけたくなると思いますが、かけるたびに水分が抜けてアイロンが効きにくくなりますので、回数のわりに効果は低くダメージだけが進行する傾向があります。

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まとめとして

いろいろと見てきましたが、ポイントをまとめますと、

・アイロン前のドライは「きちんと乾かすが、髪内部には程よく水分が残っている」状態を目指す。
・ダメージによって髪が水分をキープできなくなるため、ダメージを最小限に抑える事前のケアが基本。
・一ヶ所に2秒以上当てない、髪をギュッと潰さないように注意し、ゆっくりとアイロンスルーを行う。


縮毛矯正は、サロンさんからのご質問も多く、苦手な方も多いかと思います。

ブリーチなどもそうですが、髪への負担が大きいメニューほど、丁寧な施術やノウハウなどが必要です。
美容師さんにはとっては、疲労やプレッシャーが大きいかと思いますが、お客さまに喜んでいただけた時は、本当に嬉しいですよね。
このコラムがそのお役に立てれば、私も嬉しい限りです。

最後に、このコラムは美髪と経営を考えるコラムです。
ぜひ、素晴らしいお仕事をしていただき、堂々とその対価を頂戴して、実りあるサロン運営を行っていただきたいと願っております。

商品教育 桝田

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