【やさしく学ぶ最新の基礎知識】「キューティクル」「保護成分」
今回は、美容師さんにとってなじみ深いキューティクルについてです。
髪のツヤや滑らかさ、または、薬剤の浸透のしやすさなど、さまざまな場面でキューティクルの存在を実感されているかと思います。
このコラムでは、そのキューティクルの基礎や、髪の保護成分について見ていきたいと思います。
INDEX
髪を守るキューティクル
キューティクル(毛表皮)は、髪の表面を覆っている「うろこ」のような組織です。
屋根の瓦のように、少しずつズレながら重なり、外的刺激からの保護や、内部組織の流出防止などの役割を担っています。
このキューティクルの重なりは、平均して、細毛では5~6枚、普通毛では6~8枚、太毛では8~10枚ほど重なっていると言われています。
しかしこれは、年齢によっても違いがあり、ムーランエムーランが走査型電子顕微鏡を用いて行った研究では、20代の普通毛が平均6.6枚であったのに対し、50代~60代の普通毛の平均は、5.8枚と減少しており、加齢により減少することが分かっています。
また同様に、キューティクル1枚の厚さも、加齢により薄くなることが分かっています。
手触り・ツヤ・薬剤の浸透などは、このキューティクルの状態に左右されます。
エイジング毛で、ツヤの鈍さを感じたり、薬剤の過剰反応が起こったりするのは、このキューティクルの影響も考えられます。
キューティクル1枚の構造
1枚のキューティクルを詳しく見ていくと、大きく分けて4つの層が重なる、多層構造になっています。
それら4つの層を、まず簡単にお伝えすると、上から「エピキューティクル」「A 層」「エキソキューティクル」「エンドキューティクル」となっており、おおまかに上から下にかけて、徐々に、水を吸いやすくなる・ダメージしやすくなる、といった特徴があります。
詳細については、以下をご覧ください。
エピキューティクル
1枚のキューティクルの、最上層の組織をエピキューティクルと言います。
後述しますが、18MEAという脂肪酸や皮脂と共に、最前線で髪を守っています。
半透膜という性質で、必要な水分は吸収し、余分な水分は遮断します。
A 層
上から2番目の層です。
硫黄を含む硬いタンパク質で構成された”鎧”のような存在で、耐久性に優れ、外的刺激から髪を守ります。
水分を吸収しない撥水性の性質です。
エキソキューティクル
A層よりもやわらかくダメージを受けやすいですが、キューティクルの柔軟性に関わり、髪を曲げた際のキューティクルの割れを抑制します。
水分をあまり吸収しない疎水性の性質となっています。
エンドキューティクル
最下層にあるのがエンドキューティクルです。
やわらかい組織で、衝撃や力を吸収するクッションのように働き、髪への押し・曲げなどの外力からキューティクルを守ります。
水分を吸収しやすい親水性で、また、CMCに隣接する層のため、薬剤がCMCを通過する際、CMCから溢れた薬剤が流れ込みやすくなっています。コチラをご覧ください:CMCの基礎
キューティクルを守る18MEA
先ほどご紹介したとおり、キューティクルの最上層にはエピキューティクルという組織がありますが、実はそのエピキューティクルの上には、18MEA(18エムイーエー)という脂肪酸が存在しています。
この18MEAは、毛穴から出てきた皮脂を、髪の根元から毛先まで広げて、髪全体を皮脂でコートするという重要な役割を担っています。
髪を防御するのはキューティクルの役割ですが、そのキューティクルも含め、髪全体を守っているのが18MEAと皮脂のコンビです。
薬剤によるダメージ
キューティクルのダメージは、18MEAの消失からはじまります。
18MEAは、アルカリ剤や還元剤などに弱く、カラーやパーマなどにより、簡単に消失してしまいます。
これにより髪およびキューティクルの防御力は一気に低下します。
また同時に、エンドキューティクルのダメージも起こります。
先ほど説明したように、薬剤の通り道であるCMCに隣接するエンドキューティクルは、水分を吸収しやすい性質のため、CMCから溢れた薬剤を吸収しダメージを受けます。
エンドキューティクルの損傷にCMCの接着性低下も重なり、キューティクルはとても剥がれやすくなってしまいます。
コチラをご参考ください:CMCとは
保護成分
ここからは、髪の表面に作用し、キューティクルの働きをサポートする毛髪保護成分について見ていきます。
多種多様な成分がありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。
【PPT系】
PPT系では、分子量10,000以上の高分子PPTが毛髪保護を得意としています。
このタイプは、保護と薬剤の作用を両立させる必要がある、事前処理での使用に向いています。
コチラご覧ください:PPTの種類
成分例:加水分解ケラチン
【ポリマー系】
ポリマー系では、主にプラスイオンを持つカチオン性ポリマーが使用されています。
髪表面のマイナスイオン部分に吸着し保護して、摩擦や静電気から髪を守りながら、髪をまとめます。
さまざまなアイテムに使用されますが、インバス・アウトバストリートメントなど、施術の後半で使用するアイテムに向いています。
保護と質感補助を得意とする系統です。
成分例: ポリクオタニウム-10
【シリコーン系】
シリコーン系は、髪表面を保護し、滑り・ツヤ・まとまりなどを向上させます。
軽くサラサラとした質感のものから、重さを与えおさまりよくするものなど、さまざまな種類があります。
事前処理剤や事後処理剤、インバス・アウトバストリートメントなど、幅広く使用されています。
成分例:ジメチコン、アモジメチコン、シクロメチコン
【油脂系】
油脂系は、脂肪酸誘導体や植物由来オイルをベースとした保護成分です。
水分の蒸散抑止と、余分な水分浸入の遮断に働き、やわらかさやツヤを与えます。
成分例: 18-MEA、γ-ドコサラクトン
【多糖系】
多糖系は、天然由来の高分子保護成分で、髪を保護し、自然な滑らかさやツヤ感、軽やかな保湿感などに働きます。
傾向的には、細毛に向いている成分が多いかと思います。
成分例:キトサン、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
おわりに
キューティクルは、髪のツヤや手触り、仕上がりのすべてに関わる大切な土台です。
基本的に頑丈ではありますが、施術や日常生活の中で剝がれてしまう脆さもあります。
キューティクルが失われた髪というのは、体に例えれば皮膚のない状態のようなもので、
その状態で、ブリーチやカラー、パーマなどの施術に耐えるというのは、とても厳しいものです。
施術をしやすく、また仕上がりを良くするためにも、キューティクルというのはとても大切ですので、しっかりとしたケアを心がけたいですね。
商品教育 桝田