【保存版】美容室施術トラブル 対応マニュアル
美容室を経営している以上、いつトラブル・クレームが発生するか分かりません。
少しでも迅速に対応出来るよう、事前に対応策を考えておくことが美容室経営では重要なことになります。
トラブルやクレームの事例や起こった時の対応方法をまとめましたので、ぜひご覧ください!
INDEX
- 【事例】お客さまとのトラブルやクレーム
- 【事前対応】トラブルやクレームを避けるために気を付けたいこと
- 【対応方法】トラブル・クレームが起こってしまった後の対応
- 【保険活用】賠償責任保険に加入している場合
- 参考資料
【事例】お客さまとのトラブルやクレーム
お客さまとのトラブルやクレームの事例をご紹介します。
施術例でのトラブルやクレーム
- ヘアカラー、パーマ等の施術時に薬剤でお客さまの衣服を汚した
- ヘアカラー、パーマ等を施術して、お客さまの頭皮・顔面などに損傷(カブレ等)を与えた
- ヘアアイロンがお客さまの肌にあたり、やけどを負わせた
- ストレートパーマを施術して断毛した
- パーマ、ストレートパーマを施術して、オーバータイムを起こし毛先が縮れた(ハレーション)
その他のトラブルやクレーム
- お客さまから預かったカバン・イヤリング等を汚してしまった、壊してしまった又は紛失した
- お客さまが入口やシャンプー台等の段差につまずいて転び、ケガをした
- 店の管理不備で、標識灯や看板が飛んだり、倒れたりしたことで、通行人にケガをさせた
【事前対応】トラブルやクレームを避けるために気を付けたいこと
薬剤のアレルギーや皮膚刺激、毛髪トラブルを防ぐために行っておきたい事前対応
新規のお客さまは当然ながら、既存の顧客も含め、施術を行う全てのお客さまに毛髪診断、カウンセリングにより過去の施術履歴、身体の異常経験や当日の毛髪状態・体調面をきちんと確認し、施術をしても問題が無いか判断しましょう。
①過去の美容施術による身体異常
以下の方には施術を避けましょう。
- 今までヘアカラーでかぶれたことのある方[ヘアカラー]
- 染毛中または直後に、じんましん(かゆみ、発疹、発赤)あるいは気分の悪さ(息苦しさ、めまい等)を経験したことのある方[ヘアカラー]
- ヘアカラー以外の美容施術(ヘアマニキュア、パーマ等)で、施術中や施術後に、お客さまが頭皮に傷みやかゆみ、刺激を感じたことがある方、または気分が悪くなるなど身体に異常を感じたことのある方
②当日の体調面
以下の方には施術を避けましょう。
- 皮膚アレルギー試験(パッチテスト)の結果、皮膚に異常を感じた方[ヘアカラー]
- 頭皮あるいは皮膚が過敏な状態になっている方(病中、病後の回復期、生理時、妊娠中等)
- 頭、顔、首筋に、はれもの、傷、皮膚病がある方
- 腎臓病、血液疾患等の既往症がある方
- 体調不良の症状が持続する方(微熱、倦怠感、動悸、息切れ、紫斑、出血しやすい、月経等の出血が止まりにくい等)
③特に注意すべき美容施術履歴(最低1年以内)
新規のお客さまはもちろん、既存の顧客でも他店で施術される可能性もあるため、下記の施術履歴の確認は大変重要です。
以下の方には十分に毛髪の事前処置、薬剤選定や放置時間を考慮して施術を行いましょう。
- 縮毛矯正等の施術でアイロン等の熱処理を行った方
- ブリーチをされた方
- ご自身でホームカラーをされた方(回数・時期)
- サロン・ご自宅に限らず、黒染めをされた方
- 銀系カラー(日光で染まる)、ヘナ、酸熱トリートメント等の履歴がある方
- ご自宅でのコテ・アイロンの使用頻度が多い方
④その他注意点
- 特に初見のお客さまのカラー・パーマ・ストレート等の履歴などをしっかり確認しましょう。わからない場合などは薬剤を使う施術を見合わせる。
- 施術中、施術後、お客さまにお声かけし、頭皮の状態(刺激・かゆみ等)や体調に変化がないか確認しましょう。
- 肌が敏感な季節は施術されるお客さまに頭皮保護オイルで頭皮保護を行いましょう。特にヘアカラー等で頭皮がしみやすい方、過去にしみたことがあるお客さまには、頭皮保護オイル等を活用し、なるべく頭皮につけないように塗布しましょう。
- 施術中に頭皮等がしみる、チクチクする等の異常を感じた時は直ちにヘアカラー等の施術を中断し、薬剤をよく洗い流しましょう。万が一、息苦しさ・めまい等の気分の悪さ、じんましん等の皮膚異常が現れた時は、すぐに皮膚科医の診察を受けるようご案内しましょう。
- ヘアカラーによるかぶれには、アレルギー性と刺激性があります。アレルギー性のかぶれは、ご帰宅後に生じることがほとんどです。ご帰宅後、頭皮の痛みや体調などに変化がありましたらすぐに皮膚科医の診察を受けていただきご連絡いただくようお伝えしましょう。
- 次回ご来店時、前回のヘアカラー等の施術後、体調等に変化がなかったかどうか改めて確認しましょう。
その他トラブルクレームを避けるために行っておきたい事前対応
- 施術前にイヤリングなどのアクセサリーを外して、お客さま用ロッカーに入れて、施錠してもらうよう案内する(ロッカーは鍵付きが望ましい、またはお客さまの見える位置に置く)
- 貴重品(財布)などは手元に持っていていただく
- シャンプー台などへ移動の際は都度眼鏡を着用してもらう
- シャンプー時のお湯の温度確認を必ず行う
- 悪天候時だけでなく、通常時も看板などが倒れないよう固定する
【対応方法】トラブル・クレームが起きた時
トラブル・クレームが起きたら、迅速な対応が必要となります。必要な対応をまとめましたので、ご確認ください。
薬剤施術(ヘアカラー・パーマ)でのトラブル・クレームが起こった時
トラブル・クレームへの対応は責任者が行いましょう
お客さまからトラブルやクレームの連絡を受けた担当者は、すみやかに責任者(オーナー・マネージャー・店長)に報告します。
トラブル・クレーム対応は責任者(オーナー・マネージャー・店長)が対応します。立場のある人が対応することでお客さまが安心されます。
問題が解決するまでお客さま対応は責任者(オーナー・マネージャー・店長)が一貫して行うことが大切です。
謝罪は速やかに
まずはお客さまにまずは謝罪しましょう。
速やかに謝罪すれば、お客さまの不満・不安が少しでも和らぎますし、初期対応でその後、問題が大きく発展する可能性がありますので、言い訳やお客さまへの責任転嫁は絶対にNGです。
被害を受けたお客さまの立場になって誠実に対応することが大切です。
施術トラブルの場合は状況確認をできるだけ詳細に
確認にあたってのポイントや注意点です。
(1)確認場所
・ご来店いただく場合、他のお客さまの迷惑にならないように話が聞こえない場所で対応(喫茶店等)
・お客さまのご自宅に伺う場合は、責任者だけでなく施術担当者と一緒に伺う(菓子折り持参)
(2)トラブル・クレーム状況をしっかりと確認(客観的に事実情報を確認する)
・お客さまの基本情報(お名前、住所、電話番号、来店日、施術メニュー、施術担当者)
・症状の確認と今までのパーマ、ヘアカラー等による皮膚トラブルの経験の有無
(3)トラブル・クレームの経緯等はきちんと記録
・後に紛争・訴訟に発展した場合の証拠とするため、トラブル経緯等を記録
(例:トラブル発生日時、施術内容、症状、経過、面談時の議事録等)
対応する際の姿勢
・情報が入れば直ぐに現場に行き、状況を把握(トラブル・クレーム対応は何よりも優先する)
・お客さまの言うことをまずは充分に時間をかけて聞く(主張・要望は必ず確認する)
・こちらの言い分を一方的にしかも専門用語を使い見下すような態度はとらない
・前向きに対応する、逃げ腰にならない
・お客さまから要求があった場合は、すぐに返答をせず、後程改めて回答をする旨を伝える
身体的損傷(ケガ)が起こった時
症状がある場合は、それを治すことを最優先に考えます。症状が完治するまでは、先方の症状を気にかけ、先方からの連絡を待つのではなく、こちらから電話・足を運ぶことで誠意を示すとともに症状そのものの確認をすることが大切です。
- 症状が激しい場合は、直ぐに病院(皮膚科専門医等)に受診いただく
- 出来る限り、責任者(オーナー・マネージャー・店長)がお客さまと同行し、診察内容を確認する
※万が一に備え、お客さまに最寄りの病院(皮膚科・眼科等)を紹介できるよう予め推奨病院を確認しておくと良いでしょう。 - お客さま自身も動揺されているので、誠意をもって気持ちが落ち着くよう冷静に対応を心掛ける
- 治療後のお客さまへの訪問、お見舞いをする
- お客さまの病院の治療費の支払いを検討する
※身体的損傷(ケガ)を受けた方の通院状況にもよりますが、特に被害者の要望がなければ被害者がいったん立て替えて、後日請求があるのが一般的です。立て替えに難色を示される場合は、別途対応が必要になります。 - 当日の施術代金の返金を検討する
※ここはオーナー判断に寄りますが、サロンの過失の場合は、速やかに対応した方がクレームを最小限に抑えられます。
悪質なクレームへの対応(主に薬剤施術トラブル以外の場合)
無理な要求(強要)や、暴行・脅迫等の「悪質」なクレームの場合の対応策です。
- 悪意のあるお客さまには相手のペースに乗らずに、常に毅然とした態度を示す
- 気分を害したことは詫びるが、全面的に非を認める言葉は言わない
- やりとりは証拠として、ボイスレコーダー等で録音、または録画しておく
- 相談先がいることを伝える
- 不当なクレームであると思われる場合は、弁護士、警察への相談を行う
「弁護士・保険担当者・美容組合に相談してから回答したいので、お客さま情報をお教えください」などと、相談相手がいることや個人情報が必要だと伝えると、相手によっては要求を引き下げるなど、態度がトーンダウンすることもあります。
【保険活用】賠償責任保険に加入している場合
お客さまへの損傷、衣服や貴重品の損傷・紛失に関わる損害は、保険で対応できるケースが多いですが、賠償責任保険に未加入だった場合、すべて自店で対応しなければなりません。
美容室で「賠償責任保険」に加入している場合、トラブル・クレームが発生したら速やかに保険会社(代理店)へ報告し、アドバイスを受けてください。
ただし、その件が保険対応出来るかどうかは、内容次第となりますので、保険会社(代理店)と相談しましょう。
賠償責任保険活用時の注意点
- 事故の状況は記録に残しておく
- 病院の診断書や領収書は、保険会社に請求書を提出する際に必要になるので必ず受け取る
- 事故内容によって補償がきかないもの、免責金額以内の補償額は支払われないもの、補償をカバーしきれていないものがあるので、その場での回答は避ける
- お客さまから示談金の意味で現金を要求される場合があるが、絶対に現金は支払わない(個人の判断で金額提示する事が失礼になる為、相手が金額提示してきた場合はその金額に妥当性があるかを第三者(保険会社、弁護士等)に確認する)
- 補償に関して口約束や断定的な話をしない(後でトラブルに発展する可能性がある)
賠償責任保険活用時の流れ
①被害者への配慮
必ず病院で受診いただき、治療を最優先に行っていただく様に促す。
②加入している賠償責任保険での対応の意思表示
賠償責任保険に加入している旨を伝え、保険で対応させていただくと伝える。
(加入保険によっては2万円までの見舞い費用が出るケースがあるので、賠償責任保険と別にお見舞いを出す場合は領収証を保管する)。
③被害者が完治するまでは細心の注意を払い症状の確認を行う
損害賠償は治療が完了、もしくは症状固定(後遺障害)するまでは賠償金額の確定はできません。
※長期間の治療に関しては按分して保険金請求も可能です。
※入院、通院治療の場合は病院の診断書(短期間であれば領収証も可)が根拠となります。
④完治までの状況の根拠に基づき賠償金額を算定
保険会社固有の算定方法で賠償金額を算定します。
※この時のポイントは賠償金額の算定は第三者である保険会社から提示があった旨をお伝えする。
⑤被害者が賠償金額に納得した場合は保険会社から被害者に入金される
示談書は賠償金額の額に関わらず取り交わしを行います。
加害者から被害者に直接賠償金を支払う場合には、支払い明細を基に保険金請求を行います。
⑥被害者が賠償金額に納得しない場合
民事上、対人賠償事故は被害者に立証責任(被害者が裁判所に調停申し立てを行う)が生じるため、金額
の提示と根拠まで被害者に立証してもらう形になります。
その根拠に正当性(裁判所が判断)があれば賠償金額を保険会社が支払います。
⑦保険会社が被害者の請求金額を認めない場合
法律の専門家に相談する
賠償責任保険について
(1)損害保険会社に加入
(2)美容所賠償責任補償制度(全日本美容業生活衛生同業組合連合会)に加入
※保険内容により補償金額や補償対象は異なりますので、サロンさまご自身の責任のもと、加入をご判断ください。
参考資料
▶美容業の苦情対応の手引き〔(財)全国生活衛生営業指導センター〕
▶ヘアカラーによるかぶれについて(日本ヘアカラー工業会)